トラウマとは?心の傷が過去の出来事なのに今も影響する理由
「もう何年も前のことなのに、なぜ忘れられないのだろう」
「思い出すと、今でも苦しくなる」
「終わった出来事のはずなのに、似た場面になると怖くなる」
このように、過去の出来事が
今の自分に影響していると感じることがあります。
一般的にトラウマは「心の傷」と表現されます。
しかし、心の傷とは、身体につく傷のように
目で確認できるものではありません。
では、トラウマとはいったい、
どのような状態なのでしょうか。
ストレスクリアルームでは、
トラウマについて考えるとき、
過去に何が起きたのかだけではなく、
その体験によって生まれた感情が、
現在の自分にどのような影響を与えているのか
という部分に注目しています。
トラウマを癒す理由
トラウマとは、一般的に、
強い恐怖や苦痛を伴う経験によって
生じる「心の傷」を意味します。
ただ、トラウマを理解するときに大切なのは、
出来事そのものと、その出来事によって
生まれた感情を分けて考えることです。
たとえば、
・過去に人から強く否定された
・大切な人に裏切られた
・突然、関係を断たれた
・人前で強く恥をかいた
・家庭の中で怖い思いをした
こうした出来事そのものは、
過去に起きたことです。
時間としては、すでに終わっています。
ところが、そのときに感じた
・恐怖
・悲しみ
・怒り
・寂しさ
・悔しさ
・無力感
こうした感情が強く残っていると、
過去の経験が現在にも影響することがあります。
つまり、
出来事は終わっていても、
その出来事によって生まれた感情が
終わっていないことがあるのです。
これが、トラウマを癒す必要がある理由です。
「過去のことなのに苦しい」のはなぜ?
頭では、
「もう終わったこと」
と分かっていのに
似た場面になると怖くなってしまう。
・思い出すだけで胸が苦しくなる
・人を信用できなくなる
・失敗することが極端に怖くなる
これは、珍しいことではありません。
過去の経験によって生まれた感情や受け止め方が、
現在の出来事を見るときにも
影響することがあるからです。
たとえば、子どもの頃に何度
も強く叱られた人がいたとします。
現在は大人になり、
当時とはまったく違う環境にいます。
それでも、人から
強い口調で言われただけで、
「怒られる」
「否定される」
「自分が悪い」
と感じてしまうことがあります。
実際には、今目の前にいる人と、
過去に自分を叱った人は別の人です。
けれど、心の中では
過去に感じた感情が刺激され、
現在の出来事を、
過去と同じものとして
受け取ってしまうことがあるのです。
トラウマは「記憶があること」だけではない
つらい出来事を覚えているからといって、
すべてがトラウマになるわけではありません。
私たちは誰でも、
悲しかったことや、
失敗したこと、
傷ついた経験を覚えています。
重要なのは、
その記憶が現在の自分に
どれほど影響を与えているのか
ということです。
たとえば、昔の失敗を覚えていても、
「あのときは失敗したな」
と思えるだけなら、
現在への影響はそれほど強くありません。
しかし、その出来事を
思い出すたびに強く自分を責めたり、
似た場面を避け続けたり、
「また失敗する」
と必要以上に怖くなったりするのであれば、
その経験に結びついた感情が、
現在にも影響している可能性があります。
つまり、記憶が残っていることと、
その記憶に振り回されていることは
全く別物なのです。
心の傷とは何でしょうか?
「心の傷」という言葉はよく使われます。
しかし、心の傷は、
出来事そのものを指しているとは限りません。
同じ出来事を経験しても、
人によって感じ方は違います。
ある人にとっては、それほど
大きな影響を残さなかった経験でも、
別の人にとっては、何年経っても
忘れられない経験になることがあります。
それは、
・育ってきた環境
・そのときの年齢
・自分が置かれていた状況
・周囲からの支え
・それまでの経験
そして、その出来事をどう受け止めたのか。
さまざまな要因が関係するからです。
だから、
「自分より大変な経験をした人もいる」
「こんなことで傷つく自分は弱い」
と比較する必要はありません。
心の傷は、
出来事の大小ではなく、
自分の中にどのような影響が残ったのか
という視点で考えることが大切です。
大きな出来事だけがトラウマになるとは限りません
トラウマと聞くと、
・事故
・災害
・暴力
・虐待
・大きな喪失
といった、非常に強い出来事を
思い浮かべる方も多いと思います。
もちろん、そのような体験が
深い心の傷につながることがあります。
一方で、
日常の中で繰り返された経験が、
長く心に影響することもあります。
たとえば、
・親から何度も否定された
・兄弟姉妹と比較された
・学校で仲間外れにされた
・大切な人から見捨てられたと感じた
・信頼していた人から裏切られた
・職場で繰り返し強く叱責された
・人前で恥ずかしい思いをした
こうした経験も、その人にとって
強い心の傷になることがあります。
大切なのは、
「これはトラウマになるほど大きな出来事だったか」
と判断することではなく、
「自分の中に何が残っているのか」を向き合うことです。
過去の体験には「意味づけ」が加わることがあります
私たちは、出来事を単なる事実として
記憶しているわけではありません。
その出来事を経験したとき、
自分なりの意味づけが
生まれることがあります。
たとえば、
誰かから否定された経験から、
「自分には価値がない」
と思うことがあります。
大切な人に裏切られた経験から、
「人は信用できない」
と思うかもしれません。
失敗した経験から、
「失敗したら終わりだ」
と思うこともあります。
つまり、同じ出来事でも、
その出来事にどのような意味を
与えたのかによって、その後への
影響が変わることがあります。
そして、この意味づけには
感情が深く関係しています。
感情が変わると、過去の見え方が変わることがある
ここで、
「過去は変えられるのですか?」
という疑問を持つ方もいるかもしれません。
もちろん、過去に起きた事実
そのものを変えることはできません。
タイムスリップして出来事を
なかったことにすることもできません。
しかし、
過去の出来事に対して現在感じている感情や、
その出来事の受け止め方が変わることはあります。
出来事そのものは同じでも、以前は、
「絶対に許せない」
「思い出すだけでも苦しい」
と感じていたことが、
時間の経過や心の変化によって、
「確かにあんなことがあった」
と少し距離を置いて見られるようになることがあります。
これは、過去の事実が変わったわけではありません。
過去と現在の自分との関係が変わったのです。
「忘れること」と「過去になること」は違います
トラウマについて悩んでいる方の中には、
「この出来事を忘れられれば
きっと楽になるはず」
と思う方もいます。
しかし、必ずしも忘れる必要はありません。
覚えていても、つらくない状態になることが大切です。
たとえば、
昔の出来事を思い出して、
「あんなこともあったな」と思える。
以前なら強く感情が動いていた場面でも、
それほど揺れなくなる。
似た状況が起きても、
「今と昔は違う」
と感じられる。
そうなれば、その体験は、
現在も続いている問題ではなく、
過去に起きた出来事として
捉えられるようになっていきます。
私は、
「過去を忘れること」と
「過去が本当の意味で過去になること」は、
違うものだと考えています。
トラウマは現在の生き方にも影響しています
過去の経験によって生まれた
感情や意味づけは、
現在の行動や考え方に影響しています。
たとえば、
・嫌われることが怖くて、人の顔色ばかり見る
・断りたいのに断れない
・失敗を恐れて、新しいことに挑戦できない
・人を信用することが怖い
・親しい関係になるほど距離を取りたくなる
・少し否定されるだけでも、強く傷つく
・何か起きるたびに自分を責める
「自分はこういう性格だから」
と思っていることの中にも、
過去の経験から身についた
反応が含まれている場合があります。
だからこそ、
現在の悩みだけを見るのではなく、
「なぜ自分は、この場面で
こんなに強い感情になるのだろう」
と、自分の反応を丁寧に見ていくことも大切です。
トラウマについて大切なのは、過去より「今」
トラウマという言葉を聞くと、
どうしても過去に目が向きます。
「あの出来事が原因だった」
「あの人に傷つけられた」
もちろん、過去の経験を
振り返ることが必要な場合もあります。
しかし、本当に大切なのは、
その過去が、今の自分に
どのような影響を与えているのか
という部分です。
昔何が起きたかだけを
探し続けるのではなく、今
・何が怖いのか。
・何に怒りを感じるのか。
・何が悲しいのか。
・どんな場面で苦しくなるのか。
現在の感情を向き合うことで、
自分の中に残っている
感情が分かってくることがあります。
トラウマとは「過去が今にも続いている状態」
過去そのものは、すでに終わっています。
しかし、
過去に感じた感情や、
その経験から生まれた意味づけが
現在にも強く残っていると、
心の中では、まだ完全には
「終わったこと」になっていない場合があります。
だからこそ、
「昔のことなのに忘れられない」
「もう終わったはずなのに苦しい」
という感覚が生まれるのかもしれません。
トラウマを理解するとき、
大切なのは、
過去を消そうとすることではありません。
まずは、
過去の体験によって自分の中に
どんな感情が残り、現在の自分に
どのような影響を与えているのかを向き合うこと。
そこから、癒しの1歩が始まります。
過去の出来事より、現在の自分を大切にする
過去に何が起きたとしても、
これからの人生すべてを、その出来事に決められる必要はありません。
過去の経験は変えられません。
けれど、
過去をどのように感じるのか。
現在をどのように生きるのか。
これから何を選ぶのか。
そこには変化していく余地があります。
もし、
「なぜトラウマが何年経っても消えないのだろう」
「どうすれば過去の影響を小さくしていけるのだろう」
と感じている場合には、
トラウマが残り続ける理由について、さらに詳しく説明した記事もあります。
↓↓(下記をクリック)
「なぜトラウマは消えないのか?|本当の原因と根本から変わる方法」
では、トラウマと感情の関係や、
過去の影響から離れていくための
考え方について詳しく解説しています。
トラウマとは、
単に「昔つらい出来事があった」
ということだけではありません。
過去に生まれた感情や意味づけが、
今の自分にどのような影響を与えているのか。
そこに気づくことが、
自分自身を理解し手放していく入り口になると、
ストレスクリアルームでは考えています。
【この記事を書いた人】
竹田 久善(たけだ ひさよし)
ストレスクリアルーム
代表カウンセラー・心理療法士
新潟市中央区の「ストレスクリアルーム」で、感情や心の悩みに向き合うカウンセリングを行っています。
これまで2,511件以上の相談に携わり、不安・怒り・悲しみ・人間関係・仕事・恋愛・夫婦・家族・親子関係・トラウマなど、さまざまな悩みと向き合ってきました。
代表ブログでは、日常の悩みや生きづらさの背景にある感情や心理について分かりやすくお伝えしています。
[竹田久善のプロフィールを見る]